DX入門(4)DXを活用したビジネス展開

(2021年03月30日)

ICT・AIを最大限に活用
 


 

 

 身体機能改善に成果を上げる「ICTリハ」

医療法人を母体とするエムダブルエス日高では、県内最大規模のデイサービス「太田デイトレセンター」(利用定員数500人)や「日高デイトレセンター」(利用定員数400人)をはじめ大小13のデイサービスを運営している。経営の大規模化への取組みは、“介護業界にイノベーションを!”と奮起する北嶋史誉社長にとって、スケールメリットを得るために欠かせない選択だった。

 

同社の場合、顧客となる施設利用者に提供する最良のサービスは、身体機能の維持・改善を目的にした最適なリハビリテーションメニューの選択と実施にある。そのため、社内にシステム開発チームを抱え、ICT(情報通信技術)・AI(人工知能)を駆使した統合支援ソフト「ICTリハ」を独自に開発。そのシステムをフル活用することにより利用者の身体機能の維持改善率83.4%という業界では驚異的といわれる成果を上げている。

「ICTリハ」というのは、施設利用者の情報を一元管理するもので、利用者の年齢や病歴、健康状態といった個人データと、ビッグデータに蓄積されている「介護度改善事例」を照合し、AIが各人に最適な運動療法の組合せを提案するシステム。ICTリハは、他法人も含め全国約60施設に導入され、約2,000万人分の利用者の膨大なデータが蓄積されていことから、高精度なリハビリメニューの選択が期待できる。そのうえ、科学的な裏付けがあることで利用者が納得して取組みやすく、機能回復や介護度改善において目を見張る成果につながりやすい。

一方、業務の効率化という面でも大幅な改善が得られている。利用者の名札についたバーコードで個人データを呼び出し、入退室時間や血圧などの検査結果、体調などを入力すれば、利用者の「連絡ノート」と施設の「カルテ」の両方に同じ情報が記録される。職員の75%が非常勤勤務という環境下で、手書き業務を削減しながら情報共有がしやすい環境を整えている。職員の残業ゼロと併せ、雑務から開放されたマンパワーを、利用者の満足度の向上につなげられるようになった。

 

さらに、コロナ禍では利用者の「利用控え」に対して、自宅にいながらオンラインでリハビリに参加できる「ハイブリッドデイサービス」の運用も開始し、デジタル化による利用者の利便性を拡げている。その一方で、内部的には最適な職員数の割り出しやシフトの作成を通して職員の密集を避けるなどコロナ対策にも効果を上げている。

 

AI技術で送迎車を活用 地域の交通弱者を救済

同社が最先端のテクノロジーを駆使して取組んでいる画期的な試みがもう一つある。それが、配車アプリ『福祉ムーバー』で、通所介護の送迎車を有効活用する新しく画期的なビジネスモデルだ。公共交通機関の維持が難しくなりつつある地方で、新たな交通インフラとして期待されている。経済産業省が推奨する事業に採択され、昨年10月からこの2月末まで、群馬・栃木・新潟エリアで実証事業が行われてきた。

 

利用者がスマホのアプリまたはコールセンターを利用して、出発地と目的地、乗車人数の情報を伝えると、近くにいて同じ方向に向かう送迎車をAIが瞬時に選び、車の場所と到着時間をアプリの地図上に表示する。それでよければ『決定』をタップして待つだけ。福祉用具の取扱いに慣れたドライバーが迎えに来て、昇降時に介助もしてくれる。通院、買い物、美容院、友人宅への訪問など、生活の足として気軽に利用できる。また、アプリの操作が苦手な人には「お助け隊」が訪問して丁寧に使い方を教えてくれるといった利用者の立場に立った行き届いたサービスといえる。

同社は、こうしたデータやデジタル技術の活用で、介護業界の枠を越えた新たな価値を創造している。

 

 

株式会社エムダブルエス日高

 

代表取締役社長  北嶋 史誉さん

高崎市日高町349

電話:027-362-0691

 

高崎商工会議所『商工たかさき』2021年3月号

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