美峰酒類/総合アルコールメーカーに成長
(2021年02月28日)
家飲み商品の開発
歴史情緒残る歌川町で戦時下に誕生
旧中山道沿いの常盤町の四ツ辻(交差点)は高崎城下へ入る木戸があった場所で、これより西が歌川町になる。いまでも明治の文明開化の香り漂う赤レンガ塀の山田文庫があり、その隣に赤レンガ倉庫が残る美峰酒類株式会社がある。
ここは明治26年(1893)に、蠟山政右衛門、政次郎親子が新潟から移り、「蠟山酒造」を建て酒造りを始めた場所だ。ちなみに、高崎の生んだ議会政治家であり政治学者として名高い蠟山政道はこの政次郎の長男である。
第二次世界大戦中に国内がコメ不足に陥りサツマイモからアルコールを取るようになって、美峰酒類株式会社に事業を移管した。
美峰酒類株式会社の設立は、太平洋戦争が始まった昭和16年(1941)。酒不足に対応するため、地域の造り酒屋が共同出資し、群馬県内のサツマイモなどから取ったアルコールを使って焼酎や合成酒を製造する会社としてスタートした。
攻めの経営に転じる
同社は、甲類焼酎をはじめとする酒類全般の製造販売とアルコール製剤の製造販売を手掛けるアルコールの総合メーカーに成長した。関東エリアと関西エリアの地域に根差したスーパーマーケットや酒類専門の大型店、地域の酒販店などに酒類を供給している。
代表取締役に就任して3年目となる萩原哲夫社長は、かつて県内酒類販売のトップの実績を誇る群馬県卸酒販㈱の代表取締役社長と会長職を務めてきた。アルコール離れや景気低迷といった厳しい時代に、販売のプロである萩原社長の招聘には、攻めの経営へ転換を図る同社の強い意志が感じられる。
家飲みで楽しめる酒類を提案
同社では新商品の開発にも余念がない。「少子化の進行と、若者世代のアルコール離れが深刻な中、缶酎ハイや瓶入りカクテルなどRTD(ready to drink)市場の伸長がここ10年以上続いています。RTDのような手軽さと炭酸のさわやかな飲み口を、家で楽しめる商品の開発を進めています。
当社は大手メーカーと比べると、少ロット生産が可能であり、大手が手を出しにくい分野を掘り起こしていきます」と萩原社長は話す。
オリジナリティあふれる商品
同社の話題の商品に『家飲みレモンサワーの素だぶる30』がある。アルコール度数30%、レモン果汁30%とアルコールもレモン果汁もたっぷり。炭酸水を注ぐとスッキリした飲み口で、類似する大手メーカーの商品と比較して内容も価格もかなりお得にできている。
また、『珈琲のお酒coffee spirits』は珈琲の大和屋とのコラボで誕生。最高級ランクの珈琲豆「キリマンジャロAA」を炭火焙煎し焼酎に浸け込んだもので、糖類や添加物を一切使用しないため珈琲豆の香りと旨味を堪能できる。
そして、9種のボタニカル(植物由来)を原料にした『クラフトジン歌川』。特にラベンダーの香りがアロマの癒しと安らぎを与える。「トニックウォーターで割ると最高」と萩原社長も太鼓判を押す。
「こんな商品は造れないだろうか?」というトップの商品開発への意欲が、従業員のやる気を活性化している。
コロナ禍で需要増『ノロMGF』
同社では、飲食店やホテル、旅館などの調理器具等の除菌や、食品製造業の生産ラインの洗浄に利用されるアルコール製剤の製造も行っている。
『ノロMGF』は、細菌による腐敗、汚染対策のほか、抗ウイルス効果のあるグレープフルーツ種子抽出物(食品添加物)を配合した新しいタイプのアルコール製剤で、肌荒れの少ない処方で、手指の除菌用にも安心して使用できるというもの。
昨年からの新型コロナウイルス感染対策で、爆発的な売れ行きとなった。高崎市を始めとし、各方面かより問合せや注文が相次ぐなど注目されている。
「世の中が大きく変化しているなか、設備投資の遅れを取り戻すのが課題です。例えば、新商品の充填が手作業になることもあるので、完全自動化を図りたい。本物志向で良質なもの、地元ならではのオリジナリティのあるもの、お得感のあるものなど商品力が求められます。若手社員の意見も取り入れ、小回りの利く小さなメーカーだからこそできるものづくりで勝負したいです」と、酒販の営業畑を長い間歩き続けてきた萩原社長の手腕に期待がかかる。
〜会社概要〜
代表取締役社長 萩原 哲夫さん
高崎市歌川町1番地
TEL:027-322-2155
高崎商工会議所『商工たかさき』2021年2月号