コロナ対策と経営に生かすテレワーク(3)
(2020年12月31日)
テレワークの導入ポイントは
テレワークできる業務・できない業務の切り分け
前掲のたかしん調査では、テレワークを実施していない企業が約9割で、その多くが「実施できる業務ではない」を理由に上げている。
店舗など対面業務、生産、建設などの現場はテレワークの導入が難しく、小売業や建設業などでは実施率が低い。また緊急事態宣言発令による一斉自粛、人が集まる施設の一斉休館のイメージが強く、経営者が「社員全員を全日テレワークにしなければならないのか」と考え、「そんなことは無理」と結論づけてしまっているのではないだろうか。
大手IT企業等が、完全テレワークに移行したというニュースはインパクトがあったが、反面「テレワークは大企業の話」という印象につながったかもしれない。
群馬県労働政策課労働力確保対策室では「業務の棚卸を行い、できることから取り組んでいただきたい」と提案する。仕事の見直しを行い、一部の社員、月や週に数日など、緩やかに発進させるのも第一歩となるという。
またテレワークにより、遠地や海外から就業できる、通勤が困難な高齢者、障がい者の就業、子育て・介護などとの両立、多様な働き方の推進という観点から、雇用機会の確保につながると県では指摘している。感染が心配で、できるだけ外出を控えたいと考えている人もおり、そうした人もテレワークなら働くことができる。
テレワークは通常勤務と同じ
テレワークによる働き方は、会社に出社する勤務と同じで、始業・終業時間、昼休みなどの休憩時間は、通常勤務と変わらない。給与体系なども通常の出社勤務と同じ。
群馬県のテレワーク導入セミナーで「労務管理見直しセミナー」の講師を務める諏訪間労務管理事務所の諏訪間正典所長は「必ずしも就業規則を変更する必要はないですが、テレワーク勤務規定の整備、労働時間の管理、費用負担などについて決めておくと安心です」と話す。
通勤手当や残業手当に対する考え方も従業者に示しておく。テレワークによって、通常の勤務から給与等の待遇が著しく変わると、従業者の理解が得られず、出社のほうがいいという方向になりかねない。
群馬県テレワーク導入支援動画では、テレワークの導入の不安点として、コミュニケーションが取れるか、セキュリティが守れるか、労働時間が把握できるか、自宅で本当に仕事をしているのか、家族の理解を得られるのか、生産性が維持できるのか、が例示されている。
オンラインツール活用で不安解消に
自宅で本当に仕事をしているのか、生産性が維持できるのかなどについては、従業者側も仕事に精励していることを伝えることで、業務意欲の維持高揚をはかることができる。
テレワークの導入例では、就業の確認を兼ね、始業時、終業時に課や係などの単位でリモート会議を行い、顔を合わせてコミュニケーションをはかる。就労時間については、勤怠のオンラインシステムのほか、メールでの報告などもあるそうだ。
就業中は、リモート会議ツールを常時起動し、画面はオフ、音声だけをオンにしておき、連絡や情報共有を行う。本社側は映像もオンにしておくやり方もある。
群馬県では「テレワークを実際に体験してほしい。オンラインミーティングも一度やってみて、できるとうれしいものです」とテレワーク体験セミナーも勧めている。
リモート会議をフル活用
都内の大手IT企業に勤務し、高崎市内のシェアオフィスでテレワークをしている武者さんに一日の流れをうかがった。武者さんは係長級で部下の管理も行っている。始業時、午後イチの業務開始、終業時に定時のリモート会議を行い、出退勤や業務進捗を確認する。詳しい業務進捗は、プロジェクト管理システム等で行っている。
武者さんの例では、定時のリモート会議の他、一日の中で、部下や客先とのオンライン会議の時間が非常に多く、テレワークでもコミュニケーションが重要であることを感じさせた。
インターネットを使ったリモート会議は、会議室での密の回避、移動中での密の回避など感染防止対策として普及・浸透しており、 群馬県のテレワーク導入動画「かんたんウェブ会議システム」では、リモート会議導入ポイントとして「その時のためにわざわざ出向く業務を見直し、移動時間・費用の節約になる」とし、オンライン上での資料の共有によるペーパーレス化などのメリットも上げている。
武者さんが利用しているシェアスペース「TREE(連雀町)」は朝7時から24時まで営業しており、会社と同じように働けるので利便性が高いという。
TREEの今泉美紀さんは「緊急事態宣言を前後して、客層が変わり、テレワークのお客様が増えました。リモート会議のために、当館の会議室を使われる方も増えています。コロナ対策でリモート会議が主流になっているようです」と話している。
テレワークを定着させるためには
テレワークは、子育てや介護との両立、ワークライフバランスへの取り組みとしても注目されている。
テレワークによる在宅勤務は、家庭で仕事ができるのだから、出社する勤務に比べ、子育てや介護との両立が図りやすいことは疑いない。
家にいても欠勤ではないことを家人に理解してもらうことも重要だ。テレワークといえども子どもをかたわらに仕事をして、効率が上がるのか、授乳時間や高齢者の介護に要する時間は、勤怠としてどのように扱うのかなどのルールづくりがある。
またテレワークを部分的に導入する場合、対象となった従業者と、対象にならなかった従業者の相互の気持ちを考え、共通理解をはかりたい。
高崎商工会議所『商工たかさき』2020年12月号