ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.42

スクール・オブ・ロック

志尾 睦子

2003年 108分 アメリカ
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ジャック・ブラック/ジョーン・キューザック/他

反骨と自由が作る
健やかな精神とは

 うだるような暑さも過ぎ、秋風と虫の音が心地よい時間を運んでくれる頃となりました。

 気候の良さに身を委ねて、質の良い睡眠と心が健やかになる休息を心がけたいところです。これらはより良き仕事をするためのエネルギーになります。心の健やかさというのは、穏やかということだけではなく、自分の内面から湧き出るエネルギーに素直になるということでもあります。元気で活力溢れる自分になることは自分の幸せのみならず人も幸せにできるのだと思うのです。今回はそんな観点からも楽しめる傑作をお届けします。

 主人公は伝説のロッカーを夢見て早十数年が過ぎてしまった男・デューイ。とにかく彼は音楽が好き、ロックが好き、その情熱は幾つになっても変わることがありません。ロックは反骨と自由だとばかりに、自分の生き方をロックと位置付け、全ての言い分をそこに当てはめているような男です。生活は怠惰で家賃も滞納、ライブになるとすぐ頭に血が上ってしまい、ロックの精神を振りかざしやりたい放題。音楽は好きだけれど、もう少し地に足ついたやり方があると思っているメンバーたちはデューイに付き合いきれず、ある日クビを言い渡します。加えて居候していた音楽仲間のテッドの家からも追い出されてしまいます。

 そんな状況下、たまたまテッド宛に来た臨時教員採用の電話を受けたデューイ。数週間でお金が作れると踏んだ彼はなんとテッドになりすまして、自分が教員として仕事を始めてしまうのです。勤務先は名門小学校。教員免許もないデューイに授業をするなど到底できず、する気もなく、ただロックの精神を子どもたちに説きます。当然子どもたちも最初はその言葉に耳を傾けることもないのですが、デューイは子どもたちに音楽の才能があることに気づき、彼らとともにバンドバトルへの出場を目論みます。

 デューイはロックに対しては至極真面目。精神を説くだけでなく歴史や理論、そして技術を伝え、いつしか子どもたちのパーソナリティを引き出していきます。親からの過度な期待や、周囲の目、差別や偏見に思い悩んでいたそれぞれの子どもたちは、ロックの精神と音楽の楽しさから自分の中のパワーに気づいていきます。デューイは世間的にはダメな大人ですが、彼の情熱と健やかな精神が子どもたちに無限の可能性を開かせ、周囲の人々も変えていくのです。

 破天荒なニセ者が最後につかんだものと、与えたものは何なのか。それは見てのお楽しみです。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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