ファミリーで紡ぎ出すデザインの力
(2020年07月29日)
石井デザイン事務所
一時代の役割を終えた建物を自分好みに再生するリノベーション。自分の想いを込めた空間は愛着が増し、そこにいるだけで幸福な時間が流れる。観音山の麓の住宅地にある石井デザイン事務所も、まさにそんな空間を実現している。機能美と温もりのある北欧テイストの落ち着いた空間は、クリエイティブな仕事もサクサクとはかどりそうだ。石井芳明社長は「4年ほど前に移転しました。小鳥のさえずりが響き、烏川の向こうにいた時より若干涼しく過ごしやすいです」と納得の笑顔を見せる。
芳明社長の下で働くのは、住宅・商業空間の設計や美術館・博物館の展示デザインを得意とする長男の太郎さんと長女のももさん、グラフィックデザインを得意とする次男の次郎さん。“おやじの背中”とよく言われるが、三姉弟が父と同じ仕事の領域に飛び込んだ背景に興味をひかれる。
高校生の時に住宅や商業施設の設計・空間デザイン分野に進もうと考えた太郎さんは、「育った家の影響があったと思います。一階から二階が開放的な吹き抜けで、冒険心がくすぐられるロフトや太い梁があって、自慢したくなる家でした」と話す。その自宅が芳明社長にとって住宅設計のデビュー作だった。
また、姉弟が幼少の頃から県立美術館や歴史博物館はもとより都内や海外の展覧会を鑑賞することもしばしばで、ハイキングやキャンプなど家族で楽しむ機会も多かったという。「いたって普通のこと」と芳明社長はほほ笑むが、子どもたちと過ごす共通の時間が何かを育んできたようだ。
家族で働くメリットについて、「育った環境が同じせいか、それぞれの物差しが似ていて話が早いところがいいです」と言う太郎さん。空間設計、インテリア、グラフィックの力が作用し合って、より魅力的なデザインが生まれることも少なくない。 モノが豊かになり、ストーリーのあるデザインが新たな価値を生む時代に、平面から立体、空間デザインを手がける同社の可能性は広がっている。
「日常の中で心に響くデザインや風景、モノなどをストックし、アイデアの引き出しをいっぱいにしておくことが大切」と、芳明社長はデザインを紡ぎ出す職人のつとめとして、日頃から自分磨きに余念がない。その背中は、同じ道を志す次世代にとって心強い標となっているようだ。
同社ではデザインに関する見聞を広めるため、海外研修を実施してきた。太郎さんのお気に入りは北欧デンマーク。幸福度の高い国の豊かな暮らしに息づくデザインに魅了されるという。「デザインの力で地域の活性化に貢献し人々を幸せにしたい」と願う。
art director 石井 芳明さん designer 太郎さん
一級建築士事務所
株式会社石井デザイン事務所
住所:高崎市石原町1611-11
TEL:027-325-2178
URL:www.ishii-design.co.jp
高崎商工会議所『商工たかさき』2020年7月号