求人難時代の切り札か「海外高度人材」(2)
(2019年08月31日)
日本が再生するチャンス
高崎機械工業協同組合(八木議廣理事長)は、今年から高度人材の活用に取り組み、副理事長の丸山機械製作所の佐藤誠一社長とサトキンの大塚康幸社長が先行事例として研究している。
昨年、丸山機械製作所では2人(男1人女1人)、サトキンでは5人(男5人)の海外人材をフィリピンから採用した。
「仕事も完ぺきにこなし、やる気にあふれ、これからの活躍に期待しています」と佐藤社長はこれまでも高度人材の採用経験があり、外国人材を評価している。「まだテストケースの段階です。関心を持っている組合員企業が多いので方向性を出していきたい」と考えている。
丸山機械製作所では電気関係の設計者を求めてきたが、いっこうに応募は無く、佐藤社長は思い切ってアジアの高度人材を採用しようと考えた。佐藤社長は東南アジアの子どもたちのためにボランティア活動を続けており、現地の国民性や文化も理解していた。訪問国で知り合った「送り出し機関」を通じて、アジアで面接をしてみようと決めた。
サトキンは14年前からベトナム、4年前からはフィリピンの海外技能実習生を受け入れており、勤勉に働く実習生たちが3年の研修を終えると母国に帰ってしまうことを大塚社長は残念に感じていた。また社員の定着を図り、創業から70年以上も続いてきたお客様の信頼を守り続けていきたいと考えていた。
「サトキンで長く働いてくれる優秀な人材がほしい」と大塚社長は佐藤社長と共に、フィリピンのマニラで工業系大学卒業生ら67人を面接。大塚社長は男性5人、佐藤社長は女性1人、男性1人の計2人の若者を採用した。
フィリピンは農林漁業が産業の中心で、全人口の1割が海外で就労しているという出稼ぎ国。佐藤社長は「海外で働くことに抵抗はなく、先進国日本で働けることに喜びを感じてくれる。彼らは責任感が強く、本国の家族に送金するため一生懸命に働く国民性」とフィリピン人の勤勉さを評価しており、海外人材を求めるならフィリピンと考えていた。またフィリピンは英語が公用語なので、英語圏に事業展開する場合にも戦力になるのもメリットだ。
面接は昨年8月に行い、研修や準備を経て今年の年頭までには、フィリピンから日本に到着し、日本での就労が始まった。
日本人従業員に対しては「習慣が違うことを受け入れ、相手国の文化を認めることが必要。日本人、外国人を問わず、人と人のふれあいが大切」と佐藤社長、大塚社長は口をそろえている。明るく快活なのもフィリピンの国民性で、職場の人間関係もうまく行っているそうだ。「仕事に取り組む姿勢もすばらしい」と社員にも信頼されている。
「地方の中小企業は人材不足、人手不足で悩んできた。日本のものづくりを地方から再生するチャンスではないか」と佐藤社長は語る。
既に高度人材を採用したいと手を挙げている機械組合の傘下企業も多数あり、佐藤社長、大塚社長はノウハウや反省点を、後続企業に生かしていきたいと考えている。
また高崎機械工業協同組合の八木理事長ら一行が現地を訪問し、現地の有名工科大学マプア大学とのインターンシップ締結を計画している。
高崎商工会議所『商工たかさき』2019年6月号