ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.24

グレイテスト・ショーマン

志尾 睦子

2018年 アメリカ 1時間45分
監督:マイケル・グレイシー
出演:ヒュー・ジャックマン


ピンチをチャンスにする方法

 冬が終わり草木が芽吹く季節になりました。年度末は、一つの区切りの時でもあります。終わり良ければすべて良し、と言いますが必ずしも良い締めくくりが待っているとは限りません。それでも、物は考えようで、終わりには常に新しい始まりが付いてくるものと考えれば、悪かったはずのことも必要なステップだったと思えるに違いありません。
 さて今回は、そんな発想の転換で新しい人生を切り開いていくことに成功した一人の男の物語をご紹介します。本作のモデルとなったのは、アメリカの興行師、P・T・バーナム。19世紀半ばのアメリカでサーカス団を組織し、その奇抜なアイデアで人々の興味を引いて成功への階段を登って行った彼の軌跡が描かれます。
 若い頃から家族を支えるためにコツコツと働いてきたバーナムは、若くして幼馴染と結婚し家族を持ちます。貧しい暮らしながら、愛する妻と可愛い子供に囲まれた生活は幸せに満ちていました。そんな中、勤めていた会社が倒産し、バーナムは途方にくれます。この先どうやって家族を養っていけば良いのか。考えた彼は、奇抜なことで人の興味を引こうとします。起死回生をかけて借金をし、蝋人形や珍しい剥製を展示する「バーナム博物館」を開きますが、宣伝の甲斐も虚しく閑古鳥が鳴いたまま。窮地に立たされた彼は、「動かない死体より、生きていて動くものが見たい」という子どもの一言から、発想を変えていきます。
 それがサーカス。小人や大男、髭の生えた女性といった身体的に変わった特徴を持つ人たちを集めて芸を披露するのです。当時はまだまだ偏見の強い時代。身体的な特徴は、変異とみなされ虐げられるのが常だったところに、バーナムはそれをそれぞれの個性と認めます。そして、堂々と日の当たるところに立つことを彼らに提案し、一流のパフォーマーとして育成していきます。人と同じことをやってもダメ、という部分はビジネスチャンスの鉄則ですが、違うことをやるだけでもダメな訳で、そこに発想の転換が必要なのだと実感します。ピンチをチャンスにするために必要なのは、マイナスをプラスに捉えられるように転換する力。身体的特徴を個性として素直に面白いと楽しめる器があったからこそ、メンバーたちの自信を生み出し、周囲を納得させることができたのだと気付かされます。
 ストーリーもさることながら、壮麗でエネルギッシュなミュージカルは心の浄化にも一役買ってくれるはずです。

高崎商工会議所『商工たかさき』2019年3月号

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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