ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.12

マイ・インターン

志尾 睦子

2015年
監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:ロバート・デ・ニーロ
   アン・ハサウェイ

仕事を、人生を、充実させるための秘訣とは

 卒業シーズンがやってきました。シネマテークたかさきでも学生アルバイトさんが数人卒業を迎え、新社会人として巣立っていきます。気持ちよく働いて人生を充実させて行って欲しいと願うばかりです。
 さて、今回オススメする1本には、仕事を、そして人生を、充実させるためのヒントが詰まっています。
主人公はニューヨークで起業した女性経営者ジュールズ。30歳でファッション通販サイトを立ち上げ、数年で一流企業に成長させた彼女はCEOとして多忙な毎日を送っています。工場跡地に作ったワンフロアの大きな社内を自転車で移動し、分刻みでスケジュールをこなす毎日。夫はそんな彼女を支えるため、仕事をやめて専業主夫となり、小さな娘の子育てをやってくれています。傍から見れば仕事も家庭も順調で、素晴らしき成功者のジュールズでしたが、実は様々なところで亀裂が生じていたのでした。
 そんな時、ジュールズの会社にシニア・インターンとしてベンがやってきます。ベンは長年勤めた会社を退職して間も無く妻をなくし、その後は一人で生活して来た70歳。現役時代と変わらぬリズムで、折り目正しい生活を心がけて来たベンは、今でも社会貢献の意欲が衰えません。そんな彼にとってシニア・インターンの応募は待ちに待った機会と言うもの。そうして、ジュールズの会社に入ったベンは社長付きを任されます。
 時代の先端をひた走るジュールズにとって、ベンは厄介者にしか映りません。御用聞きに伺うベンに対し、メールを待てと返してしまうジュールズ。メールは一向にやって来ず、1日机に張り付いて終わる日も。ベンにとってジュールズたちの新しい仕事のスタイルは驚くことばかりです。しかし彼には人をきちんと見る目が備わっているため、ジュールズの仕事ぶりや価値を素直に受け止める度量がありました。そうしてベンは、互いのズレや距離感を、持ち前の人柄と仕事ぶりで瞬く間に埋めていってしまうのです。
 結果、ジュールズは頑なになっていた心をベンの包容力でほぐされることで、いつの間にかバランスを欠いていた社員や夫との距離にも気づいていきます。
 ベンには生き方の余裕があります。それは経験と年の功の賜物。俯瞰的に会社や人を見られる重要な存在として描かれますが、人生を積み重ねて行く時に、こういう風に歳を取りたいと思ったものでした。
 会社を作るのは人。そして人を作るのは人。良き仕事をするためには良き生活を営み、良き人と時間を積み重ねて行くだけだ、と思わされます。(2018年3月:商工たかさき)

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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